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かつて岩手県八幡平市にあった巨大鉱山『松尾鉱山』の資料館と、「雲の上の楽園」と呼ばれていた松尾鉱山町跡を訪問してきました。
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松尾鉱山は、19世紀末から1969年に閉山するまで、主に硫黄を産出した鉱山です。
その規模から、前回の尾去沢鉱山とともに東北三大鉱山と呼ばれていました。
そして松尾鉱山資料館は、当時東洋一の硫黄鉱山であった通称「ヤマ」と呼ばれた松尾鉱山のありし日の姿を、パネル写真やアルバム、絵画、生産用具等によって紹介する資料館です。
入館料は無料です。
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松尾鉱山資料館の敷地内にある「誠実の人」の碑。
松尾鉱山から産出される硫黄は、黒色火薬の原料であり、合成繊維や医薬品、農薬等の原料でもあり、日本の国防、産業のためにたいへん重要な資源でした。
市街地から遠い山奥に入っての採掘という、アクセスの悪さから開発は遅れていましたが、近代化の進んだ明治・大正期に入ると本格的に開発、硫黄採掘が進められます。
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「誠実の人」碑の左隣にある、松尾鉱山小学校校歌碑(右)と安全の碑(左)。
標高900mの無人の山間に開山した松尾鉱山には、必然的に鉱山町が作られていくことになりました。
最盛期だった昭和35(1960)年には、13594人が鉱山町に暮らしていたという。
しかし高度経済成長期になると硫黄の需要減や輸入の増加で採算は悪化し、昭和44(1969)年、鉱山を運営する会社が倒産、そして鉱山町も会社と運命を共にしました。
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松尾鉱山資料館・屋外展示のED251電気機関車。
かつて松尾鉱業鉄道で使用されていた、車体中央部に運転室がある直流用電気機関車です。
本線の牽引機関車ではなく、主に車両入れ換えの際に運用されていたもののようです。
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昭和26年製造、東京芝浦電気株式会社とあります。
現在の東芝ですね。
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タービン。
松尾鉱業鉄道は松尾鉱山と国鉄花輪線を結ぶ目的で敷設された鉄道で、採掘された硫黄鉱石や各種物資の輸送、そして鉱山町に住む従業員や家族の輸送に利用されました。
しかし、昭和47(1972)年、松尾鉱山の閉山に伴い、松尾鉱業鉄道も廃線となってしまいます。
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松尾鉱山資料館の玄関口。
館内は写真撮影禁止のため写真はありません。
鉱山全体模型や鉱山関係の写真、鉱山から採掘された硫化鉱や精製硫黄などが展示されています。
史料を見学していると、事務員の人から、鉱山の方には行ったのか、と声をかけられました。
行ってないと答えると、松尾鉱山があった八幡平には、鉱山の従業員のために作られた「緑ヶ丘アパート」と「至誠寮」がまだ残っており、見学できるが、そこにいくための道「八幡平アスピーテライン」は午後5時で閉まってしまうため、早く行った方がいいとのこと。
そう言われ、時間も迫っていたので、資料館の見学もほどほどに、八幡平アスピーテラインに向かいました。
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松尾鉱山資料館からアスピーテラインを車で10分ほど走ると、緑ヶ丘アパート群の前に到着します。
アスピーテラインから、緑ヶ丘アパート前までは曲がるポイントは一カ所だけです。
旧松尾鉱山新中和処理施設の案内矢印板があるところが左折ポイントなので、見逃さないようにしたい。
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まるで有名な産業遺産「軍艦島」のような緑ヶ丘アパート。
標高が高いからなのか、立っていられないほど風が強く、山には緑が生い茂っていてとても近づけそうにありません。
遥か遠くに見えるその姿は、手の届かない、まさに雲の上の楽園という感じです。
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こちらは道をさらに進んだ先にある単身寮「至誠寮」。
緑ヶ丘アパート群に比べて壮大さはないが、こちらも歴史を感じさせる建造物です。
緑ヶ丘アパートに比べ道から近い位置にありますが、やはり藪に阻まれて近づくことはできません。
建物群をよく見たいなら、緑がない冬に行った方がいいのかもしれませんが、あんまり冬すぎると雪で埋もれているかもしれませんね。
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よく見ると崩壊が激しい至誠寮。
かつて、13000人もの人間で溢れ、にぎわっていた鉱山町ですが、今は無人の廃墟だけが残り、それも高山地帯の厳しい環境によって少しずつ朽ち果て、無に帰りつつあります。
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かつて「雲上の楽園」と謳われ、栄えた松尾鉱山の社宅群。
特に緑ヶ丘アパートは、少し距離があるからなのか、緑に埋もれつつあってよく見えないからなのか、圧倒的な存在感があるのにいまいち現実感の感じられない、不思議な建造物です。
ひょっとして、かつてこの場所に楽園を築いていた人たちの残留思念が見せている、蜃気楼なのではないでしょうか。
近づくことのできない「雲上の楽園」の夢の跡を見ながら、名残惜しくもこの場所を後にしました。
(訪問月2015年5月)