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今回の訪問先は江東区、清澄白河駅近くの清澄通り沿線に建ち並ぶ「旧東京市営店舗向け住宅」です。
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2015年2月にアメリカのコーヒー生産販売会社、ブルーボトルコーヒーのアメリカ国外初店舗ができるなど「カフェの街」として知られるようになってきた清澄白河。
もとは倉庫の町ながらお洒落タウンとして変貌しつつあるこの街に、昭和レトロな歴史的建造物が今も多く残っていると聞いて訪問しました。
上の写真はブルーボトルコーヒー清澄白河店。
倉庫だったところを改良して作られたようで、一見してカフェとは思えません。
店名も前面に表記されていないのは、描かれた青いボトルを見て判れということでしょうか。
平日の夜かつ駅からちょっと遠い立地であることを考慮すれば、お店にはかなりお客さんが入っていると思われます。
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カフェの街清澄白河は、正直コーヒーなど眠気覚ましの道具くらいの認識しかない私にとっては、あまり興味を惹かれない街です。
しかし、ブルーボトルコーヒー清澄白河店周辺にはカフェが多く、コーヒーのいい匂いが漂っていてこれは心地いい。
コーヒーの匂いに惹かれながらうろうろ歩いていると、なんともお洒落な建物を発見しました。
こちらは築50年、解体寸前だった風呂なしアパート兼倉庫を改修してカフェや雑貨屋などを入れた「深田荘」。
正式には「深田荘」でなく「fukadaso」だそうです。
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ふらっとfacadasoの中の一室、「リカシツ」という雑貨屋に入ってみました。
理科の実験で使ったことのあるビーカーやフラスコなど、懐かしい理化学ガラス製品をインテリアとして扱うショップです。
こんな小さい店でやっていけんのかなとか思っていたら、元の会社は関谷理化株式会社という創業1933(昭和8)年の歴史ある会社だった。
理化学ガラス製品は通常のガラスより熱に強く、急激な温度変化にも耐えられ、家での実用品として充分使えるという。
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fukadasoからさらに歩いて清澄通りに出ると、通りを挟んで向かいに二階建ての建物が連なっているのが見えてきます。
こちらが今回の目的地「旧東京市営店舗向け住宅」というコンクリート長屋で、関東大震災後の1928(昭和3)年、震災復興事業として当時の東京市が建築したものです。
震災を考慮した建物として、耐火構造の鉄筋コンクリート製2階建て、間口2間半の商店を4~6店舗くらいで1棟の長屋にした建造物です。
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このコンクリート長屋は清澄庭園の外縁、清澄通りに沿って南北に250メートルほど連続して建てられています。
建築から88年という年月が経ち、その間空襲による被災や改築等によって1階の店舗や外壁、屋上などが建築当初と変わっていますが、いまだに昭和レトロな外観を残している建物も少なくありません。
空き家もあり、一部では建物がまるごとなくなっている場所もありますが、現在でも商店や普通の住宅として活用されています。
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こちらは商店のひとつ、あまり建築当時から変わっていないと思われる建物。
屋上や縦長の窓に、震災後の建築で流行したというアール・デコ調装飾がみられます。
隣のオレンジ色の建物は今風の建築物ですが、当時はこうしたアールデコ調の建物がずらっと横並びになっていたんでしょう。
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もともと一階部分は店舗、二階部分は住宅として建造、貸与された旧東京市営店舗向け住宅ですが、住人に払い下げられた現在では、改修してすべて住居区域にしている建物も少なくない。
この建物は一階の商店部が完全に改装されてしまっていますが、二階部分の外壁には当時の名残であるアール・デコ調の装飾が残されています。
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こちらは隣の建物がなくなってしまったのか、横の外壁がむき出しになっており、側面がガムテープを乱暴に剥がしたダンボールのような惨状になっています。
横から見ると、もともとの部分と新たに増築された部分の違いがわかります。
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長屋の裏手にあたる清澄庭園側から撮った、旧東京市営店舗向け住宅。
表面はまだ体裁が保たれているものの裏は廃墟のようになっている建物も多いです。
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そんな旧東京市営店舗向け住宅ですが、昔ながらの店舗や住宅、空き家だけでなく、中には洒落た佇まいのカフェやレストランも数軒入っています。
「カフェの街」清澄白河の流れに乗るように、清澄白河駅近のこの旧東京市営店舗向け住宅にもお洒落なカフェやレストランが徐々に進出しているようです。
こうしたカフェやレストランは、昭和レトロの雰囲気を残すために、修繕は最低限にして建物を利用しているのだという。
現在はシャッターや空き家の多い旧東京市営店舗向け住宅ですが、いつか往年のようにずらっと店舗が並ぶ日が来るかもしれません。
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大正時代や昭和初期のころの「昭和レトロ」建造物には、不思議な魅力があると思います。
当時を生きていたわけではないのに、その時代の建物を見ると、どこか懐かしい気持ちにさせられるし、取り壊されるとなれば断ちがたい哀惜があります。
その意味では、廃墟となり取り壊されるよりも、リノベーションされ洒落たカフェや雑貨屋が入った方がずっといいです。
しかしながら、昭和レトロ建築がリノベーションされお洒落なお店となってしまうことには、一抹の寂しさも感じます。
あくまでもリノベーションされ現代チックにアレンジされたお店は「昭和レトロ」っぽい物件であり、そのものとはやはり別物であるからかもしれませんね。
(訪問月2016年1月)