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足立区東伊興にある公園兼展示施設、伊興遺跡公園を歩いてきました。
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伊興遺跡公園は古墳時代、現在は東京と埼玉の都県境となっている毛長川の流域に存在していたと考えられている村落跡「伊興遺跡」が発掘された場所に作られた公園です。
直近の駅は東武スカイツリーラインの竹ノ塚駅で、駅からは徒歩20分程度とやや遠い場所にあります。
訪問時は休日の昼間だったのですが、駅から遠いこともあってか他に誰もいませんでした。
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公園の中には方形周溝墓など、古墳時代の史跡が展示されています。
方形周溝墓は弥生時代に作られた有力者の墳墓ですが、この方形周溝墓は古墳時代に作られたものとのことです。
古墳時代、小さな村々が統合されるようになると、有力者間でも身分差が生じ、高い身分のものは前方後円墳など巨大な古墳に葬られましたが、身分の低い有力者は古墳時代でも方形周溝墓に葬られたそうです。
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公園の中には竪穴式住居のレプリカなども建っています。
竪穴式住居は縄文時代からの住居ですが、一般庶民の間には古墳時代でも使用されていました。
半地下式の竪穴式住居は夏は涼しく冬は暖かく、温度変化の影響を受けにくいため長く利用されていたとのことですが、水はけが悪いことや、採光しにくいなどの欠点もありました。
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竪穴式住居の中は古墳時代(6世紀ごろ)の竪穴式住居の内部を再現したジオラマになっています。
川辺に位置していた古墳時代の伊興では、川ではコイやカラス貝、海ではサバやスズキ、川辺近くに広がる池や沼地では蓮の実やレンコンなどが採れ、これを食べていたようです。
ちなみに太平洋戦争後期のインパール作戦で敗北し、補給が途絶えてしまった日本陸軍(第15軍)は、飢えをしのぐために現地民は食べない蓮の茎を湖沼から採ってきて貴重な副食としていたという。
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伊興遺跡公園の西側には伊興遺跡の出土品やパネルを展示した展示館があります。
入館料無料の展示館で、大きい展示施設ではありませんが伊興遺跡についてざっくり学ぶことができます。
訪れる人はほとんどいないのか、管理室には管理人のおじさんが暇そうにしていました。
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ガラスケースに入った、伊興遺跡からの出土品が展示されている展示館内部。
一階には展示室があり、二階はホールになっています。
一階展示室には縄文時代後期の土器や古墳時代の土器、古墳時代中期の須恵器、舟の復元模型などが展示されています。
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土器が展示されているガラスケースの上には、古墳時代の祭祀の様子を再現したものが展示されていました。
伊興遺跡では、神への祈りや祭祀に使用された飾りや土器が多く発掘されています。
祭祀には「子持勾玉」という、大型の勾玉の背や腹に小型の勾玉を取り付けた呪術的アイテムが使用されたそうで、子持勾玉も伊興遺跡から見つかっています。
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巫女を取り巻き、祭祀を見守る古墳時代の人々。
古墳時代の伊興は、毛長川の水運を使った中継貿易により繁栄したとされています。
その水運の安全祈願のための祭祀が、巫女を中心として行われていたようです。
科学という道標がない時代に、人々が頼みとしていた古の祭祀は、どのようなものだったのでしょうか。
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古墳時代、毛長川流域の繁栄の中心地であった伊興遺跡。
治安面などであまりイメージがよくない足立区北部ですが、このような歴史があったとはここへ来て初めて知りました。
伊興遺跡公園は足立区生物園舎人いきいき公園など竹ノ塚の名所が紹介されている竹ノ塚スタンプラリー付マップのスタンプ場所にもなっているので、訪れてみてはいかがでしょうか。
あまり観光で行くような場所でないが故に、新たな発見があるかもしれません。
(訪問月2017年3月)