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中野区中野二丁目にある近代建築、東京都住宅供給公社中野駅前住宅を見学してきました。
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現在地はJRや東京メトロ東西線が乗り入れる中野駅の南口ロータリーです。
中野駅周辺は2012年、駅北西側に「中野四季の都市」が造成されるなど、近年再開発が活発化しています。
小綺麗な街へと変貌していく中野駅周辺ですが、しかしまだ南口には太平洋戦争敗戦後の復興期に建てられたアパートも残っています。
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南口ロータリーから中央線の線路に沿って、なかのZERO方向へ歩いていきます。
今回取り上げる「東京都住宅供給公社中野駅前住宅」は、中野駅プラットホームからも見えるかなりボロめのアパートです。
普段中野駅を利用したり通過したりする方なら、見たことがあるのではないでしょうか。
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中野駅から100mと歩かないうちに、目的のアパートは見えてきました。
右手に見える側面に「1」のついたアパートが東京都住宅供給公社中野駅前住宅です。
中央特快も止まる中野駅からわずか徒歩1分という超好立地に、このような年季の入った団地があるというのは不思議な光景です。
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東京都住宅供給公社中野駅前住宅は、昭和26~27(1951~52)年に建設された鉄筋コンクリート造4階建ての賃貸住宅です。
建築からすでに65年が過ぎており、老朽化も著しいため、現在では建て替えが予定されています。
しかしこの建て替えは10年近く前から計画されているようで、計画は順調に進んでいないのではないかと思わされます。
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こちらは敷地内にあった中野駅前住宅の案内図です。
中野駅前住宅の敷地面積は約10,200平方メートルで、その中に1号棟から7号棟まで7棟248戸という構成になっています。
1号棟から5号棟までの5棟が南面平行配置、6・7号棟が直交配置となっています。
しかし訪問時はすでに5号棟が取り壊され、6棟になっていました。
居住者がすべて出て行ったため、先行して取り壊されたのかもしれません。
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アパートの線路側、北面は真っ平らではなく、中央部分が他より出っ張った形になっていて、モダンな印象を受ける建物です。
薄汚れてはいるものの一見して建物に亀裂などはなく、まだまだ現役で居住できそうでまだまだ現役でいけそうな感じです。
取り壊しの理由は、専ら駅前再開発のためなのでしょうか。
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アパートのエントランス部です。
ポストを見ると半分くらいが閉鎖されていますが、赤羽台のスターハウスなどと比べるとまだ居住者がいるようです。
当然ながら居住者がいる限り、それを叩き出して取り壊すことはできません。
十年越しの計画にもかかわらず、ずっと取り壊されていない理由はこれでしょうか。
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こちらはアパートの南側です。
凹凸のあった北面に比べて南面は完全な平面になっていてなんだか不自然ですが、これは後に風呂場スペースを増設したからだそうです。
戦後の復興期に建てられた公社中野駅前住宅は当初風呂場のないアパートで、後にバルコニー部分の半分を風呂場スペースに改造したため、南側はのっぺりとした印象を受ける形となっています。
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南面の一番端のバルコニーには、避難用の階段が取り付けられています。
バルコニーには洗濯物が干されていて、まだまだアパートには生活感がありますね。
ここが取り壊されるのも、実はそんなに近い未来ではないのかもしれません。
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また公社中野駅前住宅の敷地内は緑も多く、人通りが多く騒がしい中野駅南口にあってゆったりとしたスペースが確保され、別世界のように静かです。
以前、同じく中野区の賑やかなブロードウェイ横にあるホテルワールド会館近くを歩いたことがあり、その時も突如異空間に迷い込んだ感じがありましたが、今回も同様の感想を抱きました。
しかし近年都心部で進行する再開発の波は、いずれこういった不思議な異空間を、残り残さず失くしてしまうのかもしれません。
(訪問月2017年6月)