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和歌山県和歌山市加太に属する無人島群友ヶ島の軍事遺跡、友ヶ島第三砲台跡についてです。
なお今回につきまして、写真が2007年当時のものであることを最初にことわっておきます。
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明治時代から第二次世界大戦の敗戦にかけ、紀淡海峡に位置する無人島群友ヶ島には軍の要塞がありました。
大阪湾を外国艦隊から防衛するため、友ヶ島の一番大きな島沖ノ島に五つ、虎島に一つの砲台が築かれていたのです。
そのため第二次世界大戦の敗北まで友ヶ島は、要塞施設として一般人の立ち入りは禁止されていました。
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今回の訪問先である友ヶ島第三砲台跡は島の最も高い位置周辺に配置された、友ヶ島要塞の最主力砲台でした。
現在も第三砲台区域には砲座、弾薬庫、将校宿舎、発電所などが残されています。
なお第三砲台跡の遺構は保存状態が良好であるため、過去にステルス型ホラーゲーム『SIREN2』や映画、ドラマのロケ地にもなっています。
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現在地は友ヶ島第三砲台の入り口、かつてはゲートがあったと思われる場所です。
第三砲台は土塁に囲まれており、この切り通しを通って砲台区域内に入っていく形になっています。
正面に見える建物は、友ヶ島砲台に駐屯していた将校が生活していたという将校宿舎跡です。
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宿舎は外壁がイギリス積み工法のレンガ造り、屋根は瓦屋根という構造になっています。
友ヶ島には常時どのくらいの日本軍将校がいたのかはわかりませんが、生活施設としては小さいような気がします。
宿舎は軍人の宿舎らしく右側に三つの銃眼が空いており、開口部はゲート側に向いています。
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宿舎の内部は外観に比べて、崩壊が激しくなっていました。
建物内部は洋風な建物に対し、床の間などがある純日本式間取りとなっています。
宿舎は一般人のいない島で生活しなくてはならない将校たちの、憩いの場になっていたそうです。
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将校宿舎の隣には、軍の発電所(電灯所)跡があります。
左手が将校宿舎で、右手が発電所跡ですね。
こちらは外側も崩壊が激しく、天井が完全に崩落してしまって木々が天井から頭を出しています。
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この発電所では、第三砲台の地下設備で使われていた電灯への電力を供給していたようです。
上部に特徴的な丸窓と、外壁にジグザグ状の取っ手がつけられています。
外壁の取っ手を掴んで登り、丸窓から発電状態を観察していたんでしょうか?
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こちらは発電所の入り口です。
『SIREN2』の貝追崎夜見島砲台跡にあった電灯所入口とそっくりな形をしています。
この発電所跡もロケ地になっているのでしょうか。
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遺構っぽいものは何も残っていなさそうな発電所内部。
草木が生い茂り、調べるのはちょっと無理そうです。
大量に瓦が落ちていて、発電所の屋根も瓦葺きだったことがわかるくらいです。
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発電所跡の向かい側には小さなトンネルがあります。
レンガ積みのトンネルが、美しいアーチを描いています。
このトンネルは居住区域と砲台区域を分けるトンネルになっていて、トンネルを抜けた先は砲座や弾薬庫などがあるエリアになっています。
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トンネルを抜けると、すぐ目の前には五つの弾薬支庫(棲息掩蔽部)があります。
トンネルを出てすぐ左手に単式の弾薬支庫があり、向かいには弾薬支庫が4つ連続して並んでいます。
この弾薬支庫の辺りは景観が美しくロケ地としてよく使われており、コスプレイベント等も開催されているそうです。
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弾薬支庫とは、砲座のすぐ下にある弾薬庫とは別に、砲弾等を備蓄しておくために造られたものです。
弾薬支庫内の防湿対策のためでしょうか、正面には大きな窓もついています。
入り口や窓の上部はわざわざレンガでアーチが作られており、戦争になれば真っ先に爆撃で吹っ飛ばされる軍事施設だというのに芸術的な造りでした。
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弾薬支庫の内側から。
レンガ積みで構築された弾薬支庫は、よくあるカマボコのような形をしています。
四連の弾薬支庫の内部は通気性を上げるためか室内横に隣の弾薬支庫へ繋がる出入り口があり、四つの弾薬支庫が奥で連結している構造になっています。
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弾薬支庫からさらに進んでいくと、地下に降りていく階段があり、階段を下りた先は地下トンネルになっています。
地下トンネルは第三砲台の砲座の下を通るトンネルで、中は電灯もなく真っ暗です。
トンネルの途中には弾薬庫があり、ここに備蓄した砲弾を上の砲座に供給していました。
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地下トンネルの先は、かつて28センチ榴弾砲が設置されていた砲座跡に繋がっています。
ここは友ヶ島第三砲台跡にある四つの砲座区画のうち、もっとも整備されているという第一砲座区画です。
写真の直径3.5mある丸い穴がかつての砲座跡で、ひとつの砲座区画に二つの砲座が設置されています。
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この友ヶ島第三砲台には四つの砲座区画があり、全部で八門の28センチ榴弾砲が備え付けられていました。
各砲座区画間は戦いの最中でも行き来できるよう、連絡通路で結ばれています。
第一砲座区画の近くには、第二砲座区画へ繋がる半地下のトンネルがあります。
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第一砲座区画の隣には第二~第四砲座区画の三つの砲座区画がありますが、こちらはまだ整備が追いついていないのか、二から四にいくに従ってより荒廃していました。
大阪湾に向かう敵艦を紀淡海峡で撃滅するため、多数の砲台が設けられた友ヶ島。
しかし航空戦が主体となった太平洋戦争では活躍の場がなく、東京湾要塞の猿島砲台観音崎砲台と同じように使用されることなく敗戦を迎えました。
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戦後、無用のものとなった友ヶ島第三砲台跡ですが、その独特の雰囲気から『SIREN2』やクソゲーの帝王と呼ばれた『デスクリムゾン』、映画『彼岸島』などのロケ地として使われることとなりました。
そのため島には、それらのファンが聖地巡礼として訪れているようです。
かつて大日本帝国が要塞としていた無人島は、ロケ地とそれに伴う熱心なファンの聖地となりながら、ゆっくりとした速度で自然に還りつつあります。
(訪問月2007年11月)