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文京区春日にある軍事遺跡、陸軍工科学校跡を歩いてきました。
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現在地は、東京メトロ丸ノ内線後楽園駅を降りてすぐのところにある東京ドーム前です。
東京ドームシティにはかつて、明治4(1871)年に設置された陸軍の兵器工場、東京砲兵工廠がありました。
ここでは小銃を主体とする兵器の製造を行っていましたが、関東大震災で施設の大半が焼失してしまったことで、昭和10(1935)年小倉工廠に移転しています。
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後楽園駅から東京都道434号牛込小石川線を牛天神下交差点方向へ歩いていき、後楽公園に到着しました。
東京都道434号牛込小石川線の北側は切り立った崖になっており、高台の上は中央大学の後楽園キャンパスになっています。
この高台には太平洋戦争中、敵航空機を迎撃するための高射砲陣地が置かれていたそうです。
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こちらは敗戦後まもなくの、昭和22(1947)年米軍撮影の後楽園付近の空中写真です。
写真の一番下に東京都道434号牛込小石川線が通っており、高台の上には五つの高射砲台が半円を描くようにして配置されているのがわかるでしょうか。
この台地の上には、昭和13(1938)年まで小石川陸軍工科学校がありました。
小石川陸軍工科学校の移転後太平洋戦争が勃発し、空襲に備えて高射砲陣地が構築されたものと思われます。
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後楽公園からさらに牛天神下交差点方向へ100メートルほど進むと、右手に小石川税務署が見えてきます。
小石川税務署の西側には税務署裏へと回れる通路があり、その先には小石川台地の断崖がそびえ立っています。
おそらくこの断崖の内部には、東京メトロ丸ノ内線の地下線路が貫通しているものと思われます。
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この立ち入り禁止の金属製ジャバラの先は、税務署の寮?の廃墟につながっているのですが…
ジャバラの先に見える掲示板の後ろに、古びたレンガのアーチの一部が見えます。
通路の左側ではジャパンビバレッジ中央営業所の解体工事が行われていますが、建物が解体されたことによってこのアーチが見学できる場所まで出現したようです。
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アーチをよく見てみると、それは閉鎖され、一部が破壊された壕口のレンガアーチのようでした。
開口部はブロック塀で閉塞されていることから、中は空洞になっているのでしょう。
この場所も陸軍工科学校の跡地であり、レンガアーチの古さから、陸軍が造ったトンネルと思われます。
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ちなみに以前訪れた後楽園駅北側の礫川公園にもトンネル形式の東京砲兵工廠の試射試験場がありました。
しかしこれとは随分と大きさが違うため、この破壊された壕はこのような射撃場ではなさそうです。
小銃弾薬の保管庫とか、高射砲の弾薬置き場とかに利用されていたんでしょうか。
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断崖に造られた壕口に謎を残しながら、東京都道434号牛込小石川線に戻ります。
もう一度壕口を振り返ると、壕口がある小石川台地の上には赤色のマンションが見えます。
この壕の出口が台地の上にあるとは思えませんが、とりあえず台地の上まで行ってみたいと思います。
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小石川税務署から、隣接するジャパンビバレッジ中央営業所の解体現場前を通り過ぎ、牛天神下交差点を右に曲がります。
ここからさらに天ぷら定食屋「矢ざ和」前交差点を右に曲がると「牛坂」という狭い坂道にでます。
変わった坂名ですが、この坂の上にある牛天神の境内に牛石といわれる大石があることが名前の由来です。
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牛坂の途中の右手に、植物に埋もれかけたレンガ積みの擁壁がありました。
小石川台地の土を、流出しないよう留めている擁壁のようですが…
レンガの積み方がめちゃくちゃで、ところどころ崩壊しており、擁壁としての役目をきちんと果たせるのか心配になるレンガ擁壁ですね。
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レンガが斜めに積まれ不思議な模様を作っており、さらにはその隙間から植物が飛び出していてなんだか味わいのある壁になっています。
これは「ガンタ積み」と呼ばれる積み方で、要するに古いレンガやコンクリートを再利用して混ぜ合わせ構築したもののようです。
そういえば東京ドームホテル裏側には東京砲兵工廠の基礎レンガが展示されていますが、これらレンガは東京砲兵工廠にあったというレンガと何か関係があるのでしょうか。
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このガンタ積みのレンガ擁壁の上に位置するのが牛天神北野神社の境内です。
牛天神北野神社は1184年源頼朝により創建されたという由緒ある神社です。
祭神は菅原道真で、学業成就の御利益があるという。
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牛天神北野神社横の駐車場の壁はところどころコンクリートが剥げており、中からガンタ積みのレンガが顔を覗かせています。
ガンタ積みは関東大震災で発生したがれきを積み上げて造られたものが多いそうです。
これらガンタ積み擁壁は、関東大震災で破壊された東京砲兵工廠から出たレンガを使って造られたものなのかもしれません。
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駐車場の隣には赤いマンションが建っています。
この建物は小石川台地下の東京都道434号牛込小石川線から見えたマンション「パレス後楽園」です。
牛天神北野神社は昔からあったので、小石川陸軍工科学校の敷地西端はこのあたりだったと思われます。
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パレス後楽園前を走る道路の向こうに、古そうなレンガ塀が見えました。
こちらのレンガ塀は先ほどのガンタ積みでなく、整然と積まれたレンガ塀のようです。
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近づいて確認してみると、レンガ塀はあまり見ることの少ない、横に長手と小口を交互に積むフランス積み工法で構築されたレンガ塀でした。
造られた時代はわかりませんが、なかなか古そうな色合いのレンガです。
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このレンガ塀は曲がり角の先まで続いていて、先に寺院の門がありました。
塀は常泉院という江戸時代初期に創建されたお寺の境界塀となっています。
この寺院の向かい側も、おそらく陸軍工科学校の跡地と思われます。
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小石川陸軍工科学校の跡地には中央大学後楽園キャンパスの他、警視庁第五方面本部、筑波大学附属大塚特別支援学校など大きな施設が建てられています。
そういえば筑波大学附属特別支援学校は以前訪れた国府台にもありましたが、あちらも元軍用地でしたね。
北区の東京第一陸軍造兵廠跡には東京都障害者総合スポーツセンター、新宿区の陸軍軍医学校跡には新宿区立障害者福祉センターというように、意外と旧軍用地が障害者施設に転用されているケースが多いように感じます。
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残念ながら、小石川台地の上を歩いてもこのレンガアーチの手掛かりは得られませんでした。
もう半分壊されているし、周辺の工事が進んでいることから残りのアーチもいずれ壊されてしまうかもしれません。
破壊される前に、せめてこのアーチがなんだったのかを知りたいものですね。
(訪問月2018年11月)

【以下は2020年2月追記】
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ジャパンビバレッジ中央営業所の解体工事が終わったことにより、レンガアーチの反対側も顔を出していました。
こちらもアーチを描いており、ブロック塀で蓋がされています。
途中で削り落とされたような形をしています。