03
もうすぐ、2019年も終わりですね。私にとっては色々あって激動の一年でした。
なんか毎年、一年の終わりには「今年は激動の一年」と書いている気もしますね。
ただ本当に今年は、厳しい荒波を耐え抜いた最後の最後で、今後の人生をいい方向に転ばせることができるような出来事がありました。
さて今年最後の更新となる今回は、東京都北区栄町にある教科書図書館、東書文庫です。
1
突然ですが、このゲームをご存じでしょうか。
『黒ノ十三』というタイトルで、1996年9月にトンキンハウスより発売されたサウンドノベル形式のホラーアドベンチャーゲームです。
実際にはほとんどノータッチだったそうですが、推理作家・綾辻行人氏が監修を務めたというふれ込みでちょっとだけ注目されました。
6
ゲームの内容は、複数の執筆者からなる十三編のホラーノベルを読んでいく単純なものです。
ホラーノベルなだけあってどの物語も救いようのない結末を迎えるのですが、唯一「彼女の図書館」という話だけは終始ほのぼのしたストーリーで、結末もハッピーエンドになっています。
登校拒否の女子中学生・千里が私設図書館で働くというストーリーで、他の十二編の物語と違い登場人物やあやかしのすべてが千里の社会復帰を願い、千里はみんなに支えられて自分の場所=学校に戻る、というホラーらしからぬ展開が印象的でした。
4 (2)
そんな「彼女の図書館」の舞台となる私設図書館の画像がこちらです。
特徴のありすぎる図書館なので、ピンとくる方もいらっしゃると思います。
この図書館は…
04
以前に訪れてブログにしたことのある、北区栄町の教科書図書館『東書文庫』です。
『黒ノ十三』に出てくる背景画像は全体的にモザイクがかかっている傾向にありますが、図書館の画像は明瞭で間違いありません。
しかし、なんだって『黒ノ十三』はわざわざ教科書図書館の東書文庫をロケ地にしたんでしょうか。
05
というわけで、答えを探しに娘を連れて『東書文庫』のある北区栄町にやってきました。
こちらは栄町で見つけた銀行の広告入りの古い住居表示。
この協和銀行というのは、現在のりそな銀行の前身のひとつみたいですね。
P_20191212_132335
昭和11(1936)年竣工のアールデコ様式近代建築で、日本最初の教科書図書館『東書文庫』。
東書文庫は北区堀船に本社を置く東京書籍株式会社が運営する同社の附設図書館です。
明治42(1909)年創業という東京書籍の「国定教科書はもちろん、藩学・寺小屋時代からの教科書や教授書、教育専門書など、今のうちに収集保存しておかなければ、いずれ散逸してしまうであろう」との思いから創立25周年記念事業として設立され、太平洋戦争における空襲の被害もなく現在に至っています。
02
東書文庫が『黒ノ十三』のロケ地だったのは、この東京書籍株式会社が理由と思われます。
今はもうありませんが『黒ノ十三』を製作したトンキンハウスは、東京書籍グループのコンピュータゲームソフトブランドだったのです。
要するに自社グループ(東京書籍)が所有する教科書図書館の外観を、そのままゲーム中の私設図書館として使ったわけですね。
01
東書文庫内には1962年に新設され、1979年に改装された展示室があります。
展示室では江戸時代に寺小屋で使われた往来物、明治初期の教育現場に登場した掛図、明治期の検定教科書などが展示され、江戸時代から現代にいたる教科書の変遷を見学・勉強することができます。
なお展示室の見学は電話での事前予約が必要です。
14
展示室には戦前・戦中の国定教科書も展示されていました。
左が昭和8(1933)年から昭和15(1940)年に使用された「サイタサイタ サクラガ サイタ」で始まる小学国語読本『サクラ読本』、右は昭和16(1941)年以降の新入生に支給された「アカイアカイ アサヒアサヒ」で始まるヨミカタ『アサヒ読本』です。
サクラ読本が作りも印刷も立派なものだったのに対し、アサヒ読本は戦中の物資不足を反映して紙質や印刷が質素なものだったという。
16
こちらは第二次世界大戦の敗北によって登場した墨塗り教科書の「ヨミカタ」。
敗戦した日本に君臨した進駐軍は、占領下政策として日本の教科書の戦意高揚を謳った文章を墨で読めないように塗りつぶさせました。
このようにほぼ全行が墨で塗りつぶされてしまった教科書も少なくなかったそうです。
これじゃ教科書でもなんでもないですね…
114
「勝った、勝った」と言い続ける軍のでたらめな発表を信じ、帝国の滅亡まで突き進んだ第二次世界大戦。
情報の真実を見極めるためには、教育がとても大切なことですね。
その教育の基礎となる教科書には、更なる進化を遂げていってほしいと思います。
(訪問月2019年12月)