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神奈川県足柄下郡湯河原町にある、しとどの窟を歩いてきました。
しとどの窟は、1180年の石橋山の合戦に敗れた源頼朝が安房に逃れる際、一時的に身を隠したとされる山中の洞窟です。
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しとどの窟には、箱根町から湯河原方面に行く箱根登山バスを利用していきました。
しとどの窟に近いしとどのいわやバス停は、箱根町バス停から五つめのバス停で所要15分ですが、料金は730円とタクシー並みの価格。
しかも日に3、4本しかないのでご利用は計画的に。
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しとどのいわやバス停がある椿台。
椿台は神奈川景勝50選のひとつで、眼下に湯河原の温泉街や相模湾、真鶴半島が見えます。
周辺には廃墟っぽい展望台とトイレ、何台か車を止められる駐車スペースがありました。
しとどの窟までは、随所に矢印案内板があるので迷うことはないと思われます。
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しとどの窟までの道の途中に、城山隧道というトンネルがあります。
行ったのは暑い夏場でしたが、トンネル内は風通しもよく涼しかったです。
トンネルを抜けると、トンネルを出たすぐ脇に軽トラが止まっていて、中に大きな音でラジオをかけて寝ているじい様が見えました。
こんなところで何をしているのだろうと疑問に思いましたが、気にせず先に進みます。
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城山隧道を抜けると、ベンチなどがある広場にでます。
ここがしとどの窟入り口になっていて、ここから窟まで山を下っていきます。
近くには白銀林道の入り口もありましたが、訪問したときは何故かゲートが閉まっていました。
白銀林道は箱根湯本まで約27km続いている林道ですが、諸事情で通行止めになっていることが多いそうです。
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広場には石碑がいくつか建立されています。
しとどの窟は城山ハイキングコースの途中にあり、 神奈川県の指定史跡にもなっているため、見学者が他にいてもよさそうでしたが、この日は暑い真夏ということもあって、私たちとさきほどのじい様以外は人がいませんでした。
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「合戦に敗れた頼朝が隠れたのは、人の知らない谷底の厳窟」という伝説の通り、しとどの窟はかなり標高の低い場所にあり、しとどの窟までは先ほどの広場から約400m、15分くらいジグザグの下り坂を下っていきます。
この辺り一帯は山岳宗教の霊場となっているようで、道の両脇には石灯篭と石仏が並んでいました。
石仏は弘法大師と地蔵が多いようです。
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山道の途中途中にしとどの窟までの距離が書かれた標石が置かれています。
ひとつは400百米となっていますが、400メートルの間違いだと思われます。
倒れている標石もありますが、これは地震で倒れたのでしょうか。
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歩きながら、ふと気配がして後ろを振り返ると、私たちが歩いてきた道から誰かがこっちに向かって歩いてくるのが見えました。
それはさっきの軽トラに乗っていたじい様でした。
頭に手拭いを巻いたじい様が、何やら道につきでた木の枝などをぽきぽき折ったり、倒れた石碑を起こしたりしながら、こっちに向かって下り坂を降りてきています。
まるで後をつけられたようでちょっと気味が悪く、さっさと先に行ってしまおうかと思いましたが、じい様は山道を歩き慣れているようで、こっちより足が速い。
下るにつれてじい様がだんだん背後に近づいてきたので、やむをえず道を空けて先をゆずると、じい様は無言のまま私たちの横をすり抜け先に山を降りていきました。
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なんだったんだあのじい様はと思いながら、私たちも更にどんどん山を下って行きます。
しとどの窟が近付いて来ると、道沿いに石仏が多くなってくるとともに、日光も木々に遮られて周囲がうす暗くなり、ちょっと不気味な雰囲気になってきました。
しとどの窟は心霊スポットなどとも言われていますが、なるほどこの道を人気も明かりもまったくない夜中に歩くのは勇気がいると思います。
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そしてしとどのいわやバス停から20分ほど歩いたところで、ようやく目的のしとどの窟に辿り着きました。
しとどの窟の案内板を読みながら一息つき、先に行ったあのじい様はどこ行ったんだと辺りを見回すと、奥に見える大きな洞穴の前で何やらごそごそやっているさっきのじい様を発見しました。
その姿はどうみても観光客に見えません。
こんなところでいったい何をやっているのだじい様。
ここは人里離れた山の中だし、万が一のことを考えるとうかつに近付けないじゃないか。
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案内板のところでしばらくじい様の様子を見ていたところ、やがてじい様がこちらに近付いてきて「どうぞ見ていってください」と言って場所を空けてくれました。
そして自分は案内板の近くにあったベンチに腰掛け、一服しだす。
はて、このじい様はなんだったのだろうか。
しとどの窟の管理人かなにかなんでしょうか。
最近外国人による文化財の盗難が増えているというし、監視でもしていたんですかね。
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まあ場所を空けてくれたので、気を取り直してしとどの窟を見学します。
厳窟の奥行きは浅いですが、数人であれば隠れることのできる空間があります。
洞口の上からは水が流れ落ちてきて小さな滝になっています。
流れ落ちる冷たい水が落下地点に差し出した腕に降り注いで、夏の山歩きでほてった身体に気持ちがよかったです。
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厳窟の奥の闇の中から、たくさんの石仏がこっちをみていました。
しとどの窟には、ひな壇のように石仏が斜面に段々に配置されています。
窟内の石仏は20体以上あって、全体的に不動明王と観音様の像が多いようです。
このようにきちんと石仏が並べられているのは、私たちを追ってやってきたじい様がこの場所を管理しているからなのでしょうか。
じい様は私たちが見学を終えて帰るまで、ずっとベンチで待っていました。
(訪問日2013年8月30日)