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千葉県柏市にあった軍事施設、柏陸軍飛行場跡を歩いてきました。
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現在地は千葉県の県道47号線と279号線が交わる交差点、高田原交番前交差点です。
この交差点に面する千葉県警察柏警察署高田原交番の横には、今は使われていない古びた門柱が建っています。
この門柱は、昭和13(1938)年11月に開設された柏陸軍飛行場の兵営施設(東部第105部隊)の営門とされています。
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営門脇には柏市教育委員会設置の「旧陸軍東部第105部隊の営門」解説板が立っています。
柏飛行場は昭和初期大日本帝国が中国大陸に進出し、日中関係が急速に悪化する中で帝都防空の必要性が急速に高まったことから建設された飛行場でした。
盧溝橋事件後の昭和12(1937)年9月、約145万㎡の用地が買収され、翌年11月には1500メートルの滑走路1本を有する飛行場が完成しています。
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門扉を取り付けた金具が残る門柱の先には、航空自衛隊柏送信所の施設が見えます。
柏陸軍飛行場は敗戦後民間に払い下げられ、引揚者や旧軍人などによって開拓され農地として陸稲や小麦、甘藷、落花生などが栽培されましたが、昭和25(1950)年に朝鮮戦争が勃発すると柏飛行場跡地はアメリカ軍に接収され、昭和30(1955)年に米空軍柏通信所「トムリンソン通信基地」が建設されました。
在日米空軍基地は後に返還され、現在跡地はこの航空自衛隊柏送信所をはじめ、柏の葉公園、東京大学、科学警察研究所、財務省税関研修所、国立がんセンターなどの官公庁、大学、公園になっています。
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航空自衛隊柏送信所から西に約200メートルの位置には、柏陸軍飛行場に関連する軍事遺跡が今も残っています。
このコンクリート造りの建物は柏陸軍飛行場に隣接して開設された陸軍航空廠立川支廠柏分廠のガス庫だった建物だと言われています。
陸軍航空廠立川支廠柏分廠は柏陸軍飛行場とほぼ同時期にこの地に設立されており、柏陸軍飛行場に配備された飛行機等の点検・整備を行っていました。
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いったいどんなガスが保管されていたのか、コンクリートで堅牢に造られているガス庫。
入口には当時のものと思われる鉄扉がついており、開けられないように外部から鉄パイプで補強されていて今は特に使用されていないようです。
ちなみに関係はないんでしょうが柏陸軍飛行場の南にあった第4航空教育隊の駐屯地付近では、終戦直後に突如大きな穴が掘られたといい、同部隊の将兵の間では「穴は毒ガス弾等を隠蔽して埋めるために用意されたものではないか」という噂が広まったという。
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ガス庫の裏手にも同じようなコンクリート造りの建物があります。
こちらは部品庫とのことで、入口には後から取り付けられたであろうシャッターが降りており、倉庫として使用されているようです。
柏陸軍飛行場に配備された飛行機は九七式戦闘機が多かったそうですが、不良品が多くて修理に追われていたという。
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太平洋戦争末期、帝都を含む日本全域はアメリカ陸軍戦略爆撃機B29による大規模な空襲を受けていました。
しかし、1万メートルの高々度を飛来するB29を迎撃するには日本軍のレシプロ戦闘機では高度を維持することすら困難だったため、ドイツのメッサーシュミットのロケット戦闘機を模す形で、陸海軍合同でロケット戦闘機「秋水」の開発が進められていました。
その「秋水」は、B29が帝都に侵入するその経路上にあったこの柏飛行場に配備される予定だったと言われています。
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「秋水」の実験は実験部隊の司令官が、「お光教」という教祖の中年女性がひかりーひかりーと叫びお告げをする新興宗教に傾倒し、神のお告げによって実験内容を変更させて失敗に導くなど敗戦に至るまで問題だらけでしたが、運用予定である柏飛行場には先行して秋水用の掩体壕などが作られていました。
旧陸軍東部第105部隊営門跡から県道47号線を東へ約3キロメートル、柏警察署花野井交番(また交番近く)の裏手には、その「秋水」の燃料貯蔵庫跡が残っています。
交番裏の住宅地の中に、こんもりとかまぼこ型をしたコンクリート製の燃料貯蔵庫跡が突如として現れます。
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燃料貯蔵庫の入り口はコンクリートで封鎖され、さらに鉄パイプで補強され中が見えないようになっていました。
このコンクリート製燃料庫は反対側の端にも同様の出入り口があり、これは燃料貯蔵時に出るガスを排気するために風通しをよくする目的があったからだそうです。
かまぼこ型コンクリートの上部にも同様にコンクリートで塞がれた通気口の痕があり、貯蔵庫内の通気性にはかなり気を配っていたようです。
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花野井交番裏の燃料貯蔵庫から北へ約300メートルのところにある農地には、土からヒューム管が斜めに突き出ている畑があります。
ヒューム管は並列に六本並んでおり、一見してまるで狙いをつけて並べられた大砲の砲身のように見え、スマップ香取慎吾が出演した旅バラエティ番組「おじゃMAP!!」2016年3月9日柏の回でも「砲台のある畑」として紹介されていました。
この異様なコンクリートの筒の集まりは、「秋水」地下燃料庫の通気口であったとされています。
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ヒューム管の生えた畑の西側は台地の崖になっていて、崖の端にかまぼこ型の「秋水」地下燃料庫の出入り口が顔を出しています。
この出入り口もやはり封鎖されていて中が見えないようになっていますが、燃料貯蔵庫の中はU字型の坑道になっており、中央付近に通気口であるヒューム管が接続されているそうです。
こうした「秋水」の燃料貯蔵庫は、柏飛行場から距離の離れた花野井・大室の台地に7、8個造られたといわれ、「秋水」燃料貯蔵庫が柏陸軍飛行場から少し距離が離れていたのは、ロケット燃料のうち過酸化水素の扱いが難しく、爆発事故に対するリスク分散のためだったという。
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高度10000メートルまで約3分という、わずかな時間でB29のいる高々度に到達することのできた帝都防空の期待の星、ロケット戦闘機「秋水」。
ただ「秋水」は、ロケットで上昇する時と、噴射が終わって滑空してくる時の2回しか攻撃をしかけることができず、落ちてくる時は敵護衛戦闘機のいい的で、また航続距離が短いためB29を有効に迎撃するためにはその予想進路上に大量に配備しなければなりませんでした。
加えて合計でも7分くらいしか飛べない「秋水」の一度の発射に使われるロケット燃料は膨大なものだったため、完成していたとしても実用は困難だったと言われています。
(訪問月2020年4月)