NHK連続TV小説『花子とアン』のロケ地になったという歴史的建造物、静岡県熱海市の「起雲鶴」を訪問してきました。
DSCF8688

起雲閣は1919年、当時の富豪「内田信也」氏の別邸として建築され、後に所有者が変わるごとに増築され巨大な邸宅となった「熱海三大別荘」のひとつです。DSCF8635
起雲閣には熱海の中心地?である熱海サンビーチからバスで向かいました。
サンビーチには尾崎紅葉の小説「金色夜叉」を記念して造られた「貫一お宮の像」があります。
寛一お宮の像は、大正時代の金色夜叉の歌がエンドレスで流れており、また夜はライトアップされているし対面にはもはや遺跡みたいになっているホテルの廃墟があるしとなんだかB級スポットっぽい。
DSCF8639
バス停「起雲閣前」で下車します。
バスを降りると目の前に大きな立派な門があります。
起雲閣の表門で、薬医門といわれる造りになっています。
DSCF8688
薬医門をくぐり、受付を通ると最初に来るのが起雲閣本館、麒麟。
最初の起雲閣の所有者「内田信也」によって建てられました。
起雲閣は第一次世界大戦の戦争景気によって財を成した海運王、内田信也に建築されましたが、後に別の富豪の手に渡り、さらに増築されることになります。
DSCF8642
おお、中庭が歪んで見えるこの窓ガラスは。
このガラスは古河庭園や貴賓館などでも見た「大正ガラス」と呼ばれる、表面が微妙に歪んだガラスですね。
当時の職人が一枚一枚流し込んで作ったもので、割れたら補充はききません。
DSCF8643
和館、麒麟の座敷。
群青色の壁がとても珍しいですが、これは石川県加賀地方の伝統的な技法を使って染め上げたものらしく、この色は非常に格式の高い色とのことです。
もともとこの色だったわけでなく、起雲閣が旅館として運営されるようになってからこの色に変えられました。
DSCF8645
起雲閣は真ん中の中庭を囲むように、麒麟(和館)、玉姫(洋館)、玉渓(洋館)、金剛(洋館)、孔雀(和館)、音楽サロンなどの各施設が建設されており、それら各施設が渡り廊下で結ばれる構造になっています。
起雲閣の受付兼本館ともいえる麒麟から渡り廊下を通り、玉姫という洋館に行きます。
DSCF8650
渡り廊下を抜けるとサンルームにでます。
このサンルームは洋間「玉姫」に併設され、二つの部屋で洋館「玉姫」となっています。
洋館、玉姫は起雲閣の二人目の所有者、鉄道王の根津嘉一郎によって1932年に建てられました。
DSCF8654
サンルームの天井。
あいにくこの日は雨でしたが、天気が良かったなら室内に日の光が溢れていただろう。
DSCF8659
こちらが洋室「玉姫」。
こじんまりとした部屋です。
シャンデリアがなかなかかっこいい。
洋風だけでなく、天井や柱などに和風、中国風の装飾が取り入れられています。
真ん中の食卓、ちょっと幅が狭すぎる気がしますが。
DSCF8658
玉姫に隣接する洋館、「玉渓」。
巨大な暖炉が中央に位置する、ヨーロッパの山荘風の部屋です。
真ん中に見える巨大な柱は、古い寺か神社の柱とも、江戸時代の千石船の帆柱とも言われています。
DSCF8661
玉渓の次は宿泊棟になっています。
起雲閣は、根津嘉一郎の手を離れた後、桜井兵五郎の手によって旅館として運営されることとなりました。
この宿泊棟は旅館時代に新設されたもので、「起雲閣」の名前も旅館時代につけられたものであるという。
DSCF8665
起雲閣は、山本有三、志賀直哉、太宰治らが文学対談したり、それ以外にも様々な文豪が訪問したり宿泊して執筆したりした旅館でした。
まだまだ日本が貧しかった時代、こんな豪華な宿に宿泊できるなんて、当時の文豪はけっこうお金を持っていたようです。
DSCF8666
こちらは尾崎紅葉の部屋。
宿泊棟の部屋一室が、尾崎紅葉縁のもので埋め尽くされています。
尾崎紅葉も起雲閣に来たのか……と思って見ていましたが、尾崎紅葉自身は起雲閣に来ていないらしい。
尾崎紅葉は起雲閣に来たことはないけれど、熱海を舞台にした金色夜叉を書いたから作ってしまったようです。
DSCF8668
宿泊棟の先にある洋館、「金剛」。
二人目の所有者、根津嘉一郎によって建設され、桜井兵五郎によって改築された洋館です。
玉姫や玉渓よりさらに広くて装飾も豪華です。
こんな豪邸に住んでいたなんて、当時の栄華が偲ばれます。
CIMG0338
金剛に隣接するローマ風呂。
一部破損していたらしく、入ることができませんでした。
DSCF8679
起雲閣をぐるりと回ってきて、最後に目にする館がこの和館、孔雀。
孔雀を建設したのは初代の起雲閣所有者、内田信也です。
弁柄色という日本の伝統色を壁に使った部屋で、部屋全体が赤みがかっています。
壁が青かった麒麟と対照的ですね。
 DSCF8686
大正ロマンあふれる豪邸、起雲閣。
この豪華な邸宅に暮らしていた人たちは、どんな優雅な生活をしていたんでしょうか。
しかし栄華を誇った起雲閣も、最後は熱海市に寄贈され、その管理を委ねることになります。
(訪問月2014年11月)