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府中市の米軍府中基地跡地を歩いてきました。
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休日を利用して娘のあやちゃんとともにやってきた府中市の府中の森公園。
府中の森公園は京王線東府中駅から徒歩10ほどにある広大な都立公園で、公園内にはかつての武蔵野を表現したという「森・丘・川」があり、都会っ子な子供を自然に触れさせるにはうってつけの公園です。
最近は出かけた際におどおどすることが多かったあやちゃんですが、今日は巨大な木々や緑の丘が珍しかったのか、元気に走り回っていました。 
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そんな府中の森公園の東側に、公園沿いを走る平和通りという道路があります。
ずいぶんなネーミングセンスですね。
大田区の平和島など、頭に「平和」がついていたら、そこは昔、日本軍の関連施設があった場所である可能性が高いです。
この地も例外ではなく、ここ府中の森公園がある一帯は、かつて日本軍の施設「陸軍燃料廠」があった場所でした。
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都立府中の森公園から平和通りを挟んだ向かい側は、航空自衛隊の府中基地になっています。
旧日本陸軍燃料廠は太平洋戦争開戦直前の1940年に設営され、敗戦後の1945年9月、進駐軍(アメリカ軍)によって接収されます。
その後1975年に一部施設を除いて返還されるまで、この辺りには巨大な米空軍基地がありました。
米空軍の撤退後は、その敷地は大きく三分割され、ひとつは府中の森公園に、ひとつは航空自衛隊府中基地へと変わっています。
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平和通りを北上していくと、やがて鬱蒼と木々が生い茂る密林地帯にぶつかりました。
この密林地帯は、鉄条網付きのフェンスに囲まれていて入ることはできない場所になっています。 
この一帯は無秩序に緑が生い茂っており、府中の森公園を森とするなら、こちらはジャングルといった様相です。
さらに、ジャングルをよく見ると木々の緑に隠れるようにして、中に巨大な廃墟が建っているのがわかります。
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この鉄条網付きフェンスに囲まれたジャングルは、米軍府中基地が1975年に返還された際、通信施設として返還されず米軍に残された未返還区域です。
その後この未返還区域も、1986年にはさらに一部の通信施設を除いて国に返還されましたが、跡地利用をめぐってゴタゴタがあったようで、米軍立川基地キャンプ・フィンカムの昭島地区と同じように、今なお敷地は手付かずになっているようです。
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フェンスの中のいたるところに、国有地であることを示す看板があります。
管轄は財務省関東財務局、一都九県の国有財産の管理運営等を行っている機関ですね。
日本語と英語、あと何故か中国語と韓国語で立ち入り禁止を告げています。
この国有地には今も米軍施設の廃墟が多数残っているとのことで、廃墟マニアの侵入があるそうです。
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その国有地の南端に、ジャングルに食い込むようにして「平和の森公園」という公園があります。
平和の森公園はテニスコートと、あとは雑木林があるだけの、遊具などは一切ない簡素な公園です。
第二次世界大戦後の戦争の象徴であった、米軍施設跡に造った公園ゆえに「平和」が付いたのでしょう。
しかし、戦争の反対が平和なんて、いったい誰が決めたのでしょうか。
破壊と創造、機械的なエネルギーのぶつかり合いである戦争の対極にあるものは、「平和」という漠然な概念ではない気もしますが。
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平和の森公園は、米軍基地廃墟が存在する国有地密林の中に食い込むようにして造成されているため、入り口以外の三方は鉄条網付きフェンスで囲まれている刑務所のような公園になっています。
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そのフェンスの向こう、公園から目と鼻の先に米軍廃墟が木々の間から見え隠れしています。
風に揺れる枝葉の隙間から時折顔を出す米軍廃墟は、深い緑が見せた蜃気楼のようです。
今日は一歳の赤ちゃん連れですが、遊びに連れて行った子供からこれら廃墟について説明を求められた時、大抵の親はどう回答しているのでしょうか。
まあ府中の森公園があるので、この何もない平和の森公園に子供を遊ばせに来る親はあまりいないでしょうが。
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ふと周囲を見回すと、視界の端に不審な動きをしている若い二人連れが目に留まりました。
若い男女のカップルでしたが、見ると、男の方がフェンスの中に入っていて、女はきまり悪そうにこちらをちらちらとうかがっています。
服装、装備から一見して廃墟マニアのようでした。
いかな趣味とはいえ、立ち入り禁止場所に入っては危ないですよ。
中で何かあっても、誰も助けに来てはくれませんので。
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立ち入り禁止は無論のこと、更に米軍廃墟基地内はジャングルになっているため虫の宝庫にもなっていると思われます。
写真は周辺を飛んでいたスズメバチの死体です。
腹の先が黒いことからスズメバチの中でも比較的穏やかなヒメスズメバチでしょう。
ヒメスズメバチならスズメバチが狂暴化する夏場でなければ安心ですが、凶暴なオオスズメバチも棲息している可能性があるため周辺は注意が必要です。
以前、福島の千貫森で夏場に巨大なオオスズメバチと遭遇したことがありますが、あのときは肝を冷やしました。
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その平和の森公園の東側、生涯学習センターの隣に閉鎖されたゲートがあります。
こちらは米軍府中基地跡のゲートの一つだった場所のようです。
このゲートの先には今もなお、通信施設としてアメリカ第五空軍374空輸航空団第374通信中隊の管理下にある、高さ107mのマイクロウェーブ塔と管理棟があるという。
次回は「平和の森公園」の北側に残る米軍通信施設「府中トロポサイト」の周辺を歩き、敷地内に残る米軍の廃墟群を見て回ります。
(訪問月2016年5月)