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新宿区大久保の戸山公園で行われた「しんじゅく防災フェスタ2016」に行ってきました。
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戸山公園は新宿区の戸山二丁目・三丁目と大久保三丁目にまたがる広大な公園です。
今は都民の憩いの場として賑わう戸山公園ですが、第二次世界大戦の終結までこの辺り(小滝橋~箱根山の間)は陸軍戸山ヶ原演習場という帝国陸軍用地であり、ここ戸山公園大久保地区には戸山ヶ原射撃場という射的練兵場がありました。 
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今日はここ戸山公園大久保地区において「しんじゅく防災フェスタ2016」が開催されており、イベントには消防隊も来るという。
長女のあやちゃんが消防車好きなので、消防車が展示、体験乗車ができると聞きつけてやってきたのです。
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そんなわけで、東京メトロ東西線高田馬場駅から徒歩でやってきた戸山公園大久保地区。
戸山公園大久保地区の北側入り口には、都営西大久保アパート等、複数の団地がまるで公園を守るように建っています。
写真の都営住宅の他、公園の東側には関東財務局西大久保住宅という公務員住宅も複数並列して建設されており、東京第二陸軍造兵廠王子工場等と同じく、軍事施設跡は団地が多いという伝統を崩していません。
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こちらは戸山公園大久保地区南東に面する早稲田大学西早稲田キャンパス。
このキャンパスがある敷地も、かつての戸山ヶ原射撃場の用地です。
戸山ヶ原射撃場は第二次世界大戦後進駐軍により接収され、1955年の接収解除後は民間に払い下げられることとなり、跡地には大学等大きな敷地を要する施設も作られました。
このへんもやっぱり定番ですね。
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一部は団地に、一部は大学に、一部は公園になった帝国陸軍戸山ヶ原射撃場跡地。
そんな軍事施設跡地にて、本日は「しんじゅく防災フェスタ2016」と冠した防災イベントが実施されています。
その戸山公園大久保地区のやくどうの広場では、しんじゅく防災フェスタのために警視庁や東京消防庁、東京ガス、東京電力、NTT東日本など様々な協賛機関のブースが集まっていました。
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その一角に、陸上自衛隊の自衛隊災害派遣装備品展示コーナーがありました。
写害救助活動に使われるという上写真のオフロードバイクは、おそらくカワサキのKLX250と思われます。
このオフ車は陸上自衛隊の偵察用オートバイで、陸自の偵察隊や普通科連隊などで、偵察や連絡の任務等で使用されているそうです。
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ちなみに来ていたのは練馬駐屯地の陸上自衛隊第1師団隷下の第1普通科連隊。
普通科連隊とか言われてもなんのとかよくわかりませんが、要するに歩兵連隊の自衛隊バージョンと思われます。
高機動車のバンパーに「1普-4」と書かれていますが、第1普通科連隊の第4中隊とかそんな感じの意味でしょうか。
かつての帝国陸軍射撃場に、帝国陸軍の後身というべき陸上自衛隊が防災キャンペーンにやってくるという構図はなかなか興味深いです。
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各ブースを回りつつ、戸山公園大久保地区の南側、いこいの広場まで歩いてきました。
この辺りはもう防災フェスタの展示コーナーになっておらず、比較的人も少なく静かです。
かつての戸山ヶ原射撃場は、誤射、流れ弾、誤爆等により周辺の住宅を破壊し、児童、通行人等を殺傷する事件が度々発生していたという。
その被害は昭和元(1925)年、周辺の住民から移転を求める請願書が出されるほどでした。
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住民からの請願を受けた陸軍は、射撃場全体を鉄筋コンクリートのトンネルで覆うという被害防止策を講じました。
そのため、当時は全長300mにも及ぶカマボコ型のトンネルが七本、ここ戸山公園大久保地区に横並びで建っていたという。
また、戸山公園大久保地区の南端にあるのびのび広場の南側には、現在でも巨大な土塁が残っています。
この土塁は戸山ヶ原射撃場の遺構であり、かつては射撃場から出る流れ弾を防ぐための土塁であったと思われます。
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のびのび広場の南側を通る生活道路からは、その土塁がよく見えます。
現在の土塁は戸山ヶ原射撃場の接収~払い下げの過程で、一部が宅地となったため途中で切れていますが、その宅地と戸山公園の境の塀に、今も当時の帝国陸軍の境界石が残っていました。
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塀の片隅に「陸軍」と明朝体ではっきりと刻まれた文字が残る陸軍境界石。
戦前は広大な戸山ヶ原演習場があったために、この辺りは発展から取り残された地であったという。
しかしその戸山ヶ原演習場の用地が丸々転用できたために、この地に早稲田大学や学習院女子大等を誘致することができ、今や戸山公園周辺は学生の街として賑わっています。
そんな若い世代の声が飛び交う中、ここがかつて空気を切り裂き、人を殺し合う弾丸が飛び交う射撃場であったことを、この境界石は戸山公園の片隅で静かに語り続けています。
(訪問月2016年9月)