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千代田区北の丸公園にある美術館、東京国立近代美術館を訪問してきました。
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東京国立近代美術館は、主に明治後半から現代までの近現代美術作品を収蔵、展示している美術館です。
常設展のほか企画展もあって、本日は「トーマス・ルフ展」 をやっていて多くのお客さんが来ていました。
なおこちらは東京国立近代美術館の本館であり、近くには東京国立近代美術館工芸館もあります。
東京国立近代美術館工芸館は、旧近衛師団司令部庁舎を再利用した建物です。
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なお東京国立近代美術館の展示作品は、その多くが写真撮影可能です。
作品解説板の右上に、写真撮影禁止マークがついていなければ撮影OKです。
ただし美術館なので、他の鑑賞者への配慮は必要ですが。
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今回この東京国立近代美術館に来たのは、 トーマス・ルフ展が目的ではありません。
興味があるのは常設展の方です。
東京国立近代美術館には第二次世界大戦中の軍の作戦状況を描いた戦争記録画が展示されているというので、戦争記録画とはどのようなものなのかと興味をもち家族を連れてやってきました。
戦時中は国民の戦意高揚のために、戦場に従軍画家が派遣され、多くの戦争記録画が描かれ、公開されたそうです。
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それではこの日展示されていた戦争記録画を見てみましょう。
こちらは洋画家、宮本三郎作の「南苑攻撃図」。
南苑は中国の北平(北京)にあって、日中戦争初期の1937年7月28日、日本軍は平津作戦によって中国軍をこの一帯から駆逐しますが、これにより日本と中国は本格的な戦争へと突入していきます。
飛行場のある南苑に突撃しようとする支那派遣軍の兵士たちが、モニュメンタルに描かれています。
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洋画家、小磯良平作の戦争記録画「娘小関を征く」。
娘小関(じょうしかん)とは、中国の河北省と山西省の境の関所で、軍事・交通上の要所です。
主に静物画や単体の人物画を得意としてきた日本の洋画家たちにとって、広大な空間と群像を描く戦争記録画は難しかったそうですが、この作品では奥のアーチ橋を利用し、四角い絵の下半分にさらにもう一つ四角い空間を作って、そこに将兵や軍馬を配置するという手法が用いられています。
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福田豊四郎作「スンゲパタニに於ける軍通信隊の活躍」。
スンゲパタニとは現在で言うところのスンガイペタニのようで、マレー半島のマレーシア、タイ国境近くのマレーシアの都市。
大日本帝国は昭和16年12月8日、真珠湾攻撃を攻撃を皮切りに中国を支援する米英諸国ら連合国に対し宣戦を布告し、戦場は中国大陸から太平洋全域へと拡大していきます。
マレー半島は大英帝国の東南アジアの要衝、シンガポールに繋がる道であり、日本陸軍はここを突破し電撃的にシンガポールを攻略しました。
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洋画家、中村研一作「タサファロング(ガダルカナルに於ける陸海軍共同作戦図)」。
ニューギニア、ソロモン諸島の要所、ガダルカナル島のタサファロング沖に海軍の駆逐艦によって陸軍第17軍が上陸したものを描いた戦争記録画。
非常にかっこいい戦争記録画なのですが、この後のガダルカナル島の戦いの悲惨な状況を考えると、とても暗鬱としたものに見えてしまいます。
日本陸海軍はこのガダルカナル島を巡る戦いで連合国軍に敗北し、以後、太平洋戦争の形勢は一気に連合国軍側に傾いてしまい、ガダルカナルの敗退から二年後の昭和20年、大日本帝国は連合国軍に降伏することとなります。
日中戦争から敗戦まで八年、国力が貧弱だった大日本帝国には長すぎる戦いでした。
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ちなみにこれら戦争記録画は、実はアメリカ合衆国の所有物です。
写真は戦争記録画の解説板ですが、一番下に小さく「無期限貸与」と書かれているのがわかるでしょうか。
第二次世界大戦中に描かれた戦争記録画は、敗戦直後の1946年、計153点がGHQによって接収され、 1970年に無期限貸与という形で日本に返還されているものです。
これら戦争記録画は、現在は東京国立近代美術館に保管され、部分的に公開されているので、興味ある方は訪問してみてはいかがでしょうか。
(訪問月2016年11月) 
東京国立近代美術館・収蔵戦争記録画リスト
http://home.g01.itscom.net/cardiac/WarArtExhibition.pdf