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荒川区東尾久の都立公園、尾久の原公園を歩いてきました。
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現在地は荒川区の隅田川を渡す尾久橋に近い、荒川区立熊野前保育園の前です。
この保育園の前には、荒川区教育委員会が設置した「東京初空襲の地」解説板があります。
太平洋戦争開戦からわずか四ヶ月後の昭和17(1942)年4月18日、日本本土に急接近していたアメリカ海軍のヨークタウン級空母、エンタープライズとホーネットから飛び立ったアメリカ陸軍機B-25双発爆撃機ミッチェル16機によって、日本本土は初めて空襲を受けました。
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ドゥーリットル空襲と呼ばれたこの攻撃の中で、最初に攻撃されたのがこの尾久橋付近であったと説明文にあります。
爆撃隊の二番機が爆弾三個と焼夷弾一個を投下し、死者10人、重傷34人、軽傷14人、全焼43戸、全壊9戸、半焼1戸、半壊13戸の被害がでたという。
説明板付属の地図によると爆弾を落とされたのは、現在の熊野前保育園がある東尾久8-23付近と、保育園裏手の交差点の対角線上にある東尾久8-27付近のようです。
それにしても米軍はなぜ、このような一般住宅地を初空襲したのでしょうか。
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熊野前保育園から尾久橋方向へ進むと、橋の下の東側によくドラマの撮影などで使われるアルファスタジオがあります。
正面の昭和60年代風アパートは、テレビドラマ「トリック」の主人公、山田奈緒子が住むアパート「池田荘」として使われたあおい荘。
そのあおい荘の裏手には、隅田川沿いの辺鄙な場所には似つかわしくない巨大なビルが建っています。
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このビルは株式会社ADECAの本社ビルで、この付近にはADECAの研究所が建ち並んでいます。
本社ビル前のT字交差点付近にもドゥーリットル空襲で爆弾が投下されたと、先ほどの「東京初空襲の地」説明板にありました。
大戦景気に湧いた大正7(1918)年から昭和54(1979)年までの間、現在の東尾久七丁目には旭電化工業株式会社(平成18年にADECAに社名変更)の尾久工場があったため、これを狙ってアメリカ軍は爆弾を投下したのかもしれないと言われています。
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ADECA本社前から隅田川沿いの道を町屋方向に進んでいくと、まず下水処理場である東尾久浄化センターがあり、その先には広大な敷地をもつ都立尾久の原公園があります。
都立尾久の原公園は平成5(1993)年、旭電化工業尾久工場の跡地に開園し、現在も整備拡張中の公園です。
昭和54(1979)年、旭電化工業尾久工場が千葉や鹿島に移転すると東京都は跡地を買収し、その西半分に東京都立医療技術短期大学(現首都大学東京荒川キャンパス)や東尾久浄化センターが開設され、東半分に都立尾久の原公園が造成されました。
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しかし平成24(2012)年12月、尾久の原公園に隣接する東尾久浄化センターの建設用地内の土壌の一部から、環境基準を上回る(日本の環境基準の1100倍)ダイオキシンが検出されたため、尾久の原公園は全面閉鎖されています。
その後、問題のあったところをコンクリートやアスファルトで覆うなどして徐々に閉鎖区域を減らしていき、今回の訪問時には公園内で閉鎖されているところはありませんでした。
そんな尾久の原公園を、子供たちはかつてダイオキシン問題で揺れた公園であるとは露知らず、帝都には珍しい広々とした公園として走り回っていました。
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尾久の原公園の中心部には、トンボ池という大きな池があります。
水面にはアメンボがたくさん浮かんでいました。
この池は貴重なトンボの生息地になっているそうです。
水元公園の池のようにザリガニ釣りとかできそうな感じで、子供たちは興味津々といった感じでした。
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トンボ池の東側に、丸く草が刈り取られた芝生広場というのがありました。
これを見て思ったのが、一昔前に流行したミステリーサークル。
1980年代に流行し、発生原因について宇宙人説、プラズマ説、魔術説などが論じられましたが、1991年に製作者を自称する二人が製作方法を告白して以来、人為的なものと見なされています。
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尾久の原公園の芝生広場には、大小三つのミステリーサークルもどきがありました。
このミステリーサークルは100%人為的なものでしょうが、人為的なものとして説明のつかないミステリーサークルは今なお世界中で発見されて続けています。
子供たちはそんなミステリーサークルの上を、がしがしと走り回っていました。
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ミステリーサークルの北側には子供の遊び場として、申し訳程度の遊具があります。
滑り台とアスレチックが一体化したこの遊具、誰も使っていなかったので我が家の子供たちが長らく占拠していました。
遊具は斜面を利用して作られており、階段を登らずに滑り台で滑れるところが気に入ったようです。
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旭電化工業尾久工場では化学工業製品の苛性ソーダや可塑剤、プラスチック材料、合成洗剤、除草剤や、業務用食用製品の硬化油、脂肪酸、石鹸、マーガリン、ショートニング等を製造していたという。
その製造の過程で、ダイオキシンを副産物として流出させていたようです。
結果として開園から約20年間、尾久の原公園の来園者をダイオキシンまみれの土壌にさらすことになってしまいました。
工場跡地を都立公園として開園するなら、そのあたりをよく調べてから開園してほしかったですね。
(訪問月2017年9月)