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千葉県香取市香取にある神社、香取神宮を歩いてきました。
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香取神宮は下総国(千葉県北部)の一宮で、全国約400社の香取神社の総本社です。
全国でも有数の古社であり、その創建は弥生時代の初期、紀元前640年以上前と伝えられています。
茨城県の鹿島神宮、息栖神社とともに「東国三社」のうちの一社として知られ、皇族とも関係の深い神社です。
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朱色の楼門は、徳川五代将軍徳川綱吉により元禄13(1700)年に造営された国の重要文化財です。
楼門の上に掲げられた「香取神宮」の額は、日本海海戦の勝利で英雄となった東郷平八郎の筆だという。
しかし日本海海戦の勝利と東郷の神格化は、後に第二次世界大戦の敗北と大日本帝国滅亡の遠因ともなってしまいます。
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こちらは建てられたのが昭和15(1940)年と、長引く日中戦争の真っ最中に建築された香取神宮の拝殿。
もともとは違う拝殿が建っていましたが、皇紀2600年を記念して国費により今の拝殿に建て替えられています。
この頃の大日本帝国は戦時下による資源不足、軍事輸送優先政策のため国民に観光旅行の自粛を呼びかけていましたが、思想統制のためか皇室に関係ある神宮への参拝は推奨していたそうです。
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赤色の楼門と対比される、黒漆塗りの香取神宮の拝殿。
屋根は桧皮葺で、正面には千鳥破風と軒唐破風の立派な装飾がついています。
また柱や組物に設けられた色鮮やかな装飾も美しく、香取神宮の名に恥じない荘厳な拝殿です。
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こちらは拝殿に向かって右手にある祈祷殿。
祈祷殿は昭和15(1940)年の拝殿新築に伴い移築された旧拝殿で、楼門と同じく元禄13(1700)年の造営です。
祈祷殿前にはなぜか、カロリーメイトの巨大な合格祈願の絵馬がありました。
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私はインスタグラムをやっていないのでわかりませんが、インスタにカロリーメイトの受験生応援勉強アカウントがあるそうです。
まあ勉強は追い詰められてくると、できるだけ食事はぱっと済ませたくなってきますよね。
受験戦争もたいへんですが、将来に大きく影響することであり頑張ってほしいと思います。
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祈祷殿の隣には入館料300円で入れる香取神宮の宝物館があります。
中は写真撮影禁止なので写真は撮っていませんが、館内には国宝の海獣葡萄鏡や、大日本帝国海軍の香取型戦艦「香取」の御紋章などが展示されていました。
また海上自衛隊の練習艦「かとり」が海洋航海の際、歴訪した各国より記念品に贈られた民俗資料や工芸品が奉納され宝物館に展示されています。
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境内にはその海上自衛隊練習艦「かとり」の錨も置かれています。
昭和45(1970)年に建造された練習艦「かとり」は平成10(1998)年に除籍になるまでの28年間、毎年海上自衛隊の幹部候補生を乗せ世界の海で航海訓練を行い、世界各国を歴訪して友好と親睦を深めたという。
この錨は「かとり」が除籍された際、かとり命名の由緒の深い香取神宮に奉納されたものです。
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ちなみに海上自衛隊を含む大日本帝国海軍には、「香取(かとり)」の名を冠する三つの艦船がありました。
初代は宝物館に御紋章があった、明治39(1906)年建造の香取型戦艦「香取」で、三代目は上述の海上自衛隊練習艦「かとり」。
残る2代目は香取神宮拝殿が改築された昭和15(1940)年に建造された練習巡洋艦「香取」で、太平洋戦争中は第六艦隊(潜水艦部隊)の旗艦として潜水艦隊の指揮を執りましたが、昭和19(1944)年2月17日に発生したトラック島空襲でアメリカ軍に撃沈されてしまいました。
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この他、第二次世界大戦に関係するものとしては香取神宮の境内に香取護国神社が建っています。
香取護国神社は敗戦後間もない昭和21(1946)年9月に香取神宮境内向栄丘に創建され、旧佐原市及び旧香取郡内各町出身の英霊4213柱を奉祀する神社です。
第二次世界大戦敗北後の特殊な社会情勢のため、しばらく向栄神社と名乗っていたそうですが、敗戦から17年後の昭和37(1962)年に香取護国神社と名を改められ現在に至っています。
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最後に、一度香取神宮の赤鳥居を出て、右手の駐車場の先に「奥宮→」との看板がある急坂の横道を歩いて行った時、左手の山林の中に気になる一角を見つけました。
そこには、板で口を塞がれた二つの穴があったのです。
人目および藪のためにとても近づけませんでしたが、ひょっとすると防空壕の跡かもしれないと思いました。
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奥宮の先にある山林にも、同じように板で口を塞がれた穴を見つけました。
この辺りの山林には、こうした穴が点在しているのかもしれません。
こちらは人通りもなく、藪もなくて近づけそうだったので板の隙間から中を覗いてみました。
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中は人が2、3人入るのがやっとくらいの小さな穴でしたが、明らかに人工のものと思われる穴でした。
中はゴミだらけになってしまっていますが、防空壕跡と思われます。
2650年という香取神宮の長い歴史の中には、こんな歴史も残っているのです。
(訪問月2019年2月)