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栃木県那須烏山市の軍事遺跡、東京動力機械製造株式会社地下工場跡を歩いてきました。
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現在地は那須烏山市神長、株式会社島崎酒造の洞窟貯蔵庫、どうくつ酒造前です。
どうくつ酒造は、第二次世界大戦末期に戦車を製造するために建造された地下工場跡を利用した酒の貯蔵庫です。
サイパン島が陥落し、本格的な日本本土空襲が始まると、昭和19(1944)年11月、東京動力機械製造株式会社の疎開が決まりこの地下工場が作られました。
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洞窟貯蔵庫の入り口前に設置された、島崎酒造の製品販売所。
清酒だけでなく、長期熟成酒やワイン、リキュール、サイダーやバウムクーヘンなどのオリジナル商品が並んでいます。
ここで地下工場見学の受付をして、見学ツアーに参加することができます。
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地下工場跡は土日祝日に一般公開されており、20分間隔で見学ツアーが出発します。
製品販売所の奥に見える壕口から入っていくのかなと思いきや、小山を迂回するような位置にあるこの道から地下工場跡へと案内されます。
こちらは商品搬入口のようで、舗装路には車が通ったような痕跡がありました。
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舗装路を左に曲がったところに、商品搬入口があり、そこから地下工場跡に入壕します。
壕口を入ると、正面はストレートのたて坑になっていました。
たて坑右側には搬送待ちと思われる島崎酒造の熟成酒が積まれています。
このたて坑は長さが100mあり、地下工場はこのたて坑が三本並ぶ構造になっています。
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そのたて坑と直角に、長さ60mの複数の横坑が交差しています。
横坑は全部で五本あり、たて坑100m×3本=300m+横坑60m×5本=300mで地下工場は延べ600mの全長距離があります。
巨大な地下工場跡は2002年から一般公開が開始され、2005年からは洞窟内でのコンサートが企画されるなど、地域のコミュニティ活動の場としても活用されているという。
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素堀りで掘削された、凸凹した荒々しい地下工場の壕壁。
敗戦が近づき物資が欠乏した状況で構築された地下工場はその工程の大部分が人力であり、そこに費やされた労力が迫力となって見えるようです。
大戦末期という特異な時代体制の下で果たしてきた土木技術の一つの役割を伝える重要なものとして、近代化産業遺産にリストアップされています。
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地下工場の中央を走るたて坑の中通路を通って、帰り道につきます。
たて坑は高さ、幅ともに3.5mありますが、戦車を組み立てるにはもう少しスペースが必要でしょうね。
山裾に建造された半地下式工場では終戦まで約20台の戦車が製造されたそうですが、この地下工場で戦車が製造されることは終戦までなかったという。
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こちらは出口近くにある稀少古酒スペース。
敗戦後、地下工場は放置されましたが洞窟内の気温が古酒の貯蔵に適していることから、1994年に電気工事等の整備が行われ、1996年から熟成酒の貯蔵庫として使われています。
年間を通じ洞窟内の温度は平均10℃、季節により±5℃で清酒の熟成には最適温度であるとともに、その四季を通じた温度差により瓶内で対流が生じ常に品質が均一化された状況で熟成されるという。
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地下工場跡の見学を終えると、最初に見た製品販売所前の壕口に出てきました。
この丘陵地帯に地下工場が建造されたのは、丘陵が掘削に爆薬を必要としない凝灰質砂岩であったことや、陸軍第14師団司令部が置かれた宇都宮市に隣接していることなどが理由に挙げられています。
アジア・太平洋戦争中宇都宮は第14師団として、次々と新しい師団を編成しては戦地へ送り出しており、戦争が長引いていればここで戦車が製造され戦地へ送り出されていたでしょうね。
(訪問月2020年11月)