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千葉県千葉市稲毛区轟町の軍事遺跡、陸軍鉄道連隊材料廠跡を歩いてきました。
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千葉市稲毛区にある私立大学、千葉経済大学にやってきました。
2024年の9月も終わろうとしていたこの日、千葉経済大学総合図書館では企画展示「学び舎に残る歴史〜煉瓦棟と千葉の戦跡〜」が開催されていました。
図書館2階の展示コーナーでは、「旧鉄道連隊材料廠煉瓦建築」「鉄道連隊について」「千葉県営鉄道」「近隣(習志野・佐倉・四街道)の軍施設」「大学周辺(千葉市内)の軍施設」についての展示パネル等があり、ここ千葉経済大学の用地等にかつてあった軍事施設について紹介していました。
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現・千葉経済大学の校地に、アジア・太平洋戦争の敗戦まであった軍事施設は「陸軍鉄道連隊材料廠(敗戦時は千葉陸軍兵器支廠)」。
鉄道連隊材料廠は、日露戦争終結後、中野にあった陸軍の鉄道隊が発展拡充して連隊編成となり、当時の千葉町都賀村(連隊本部、第一大隊、第二大隊)と津田沼町(第三大隊)に移転してきた際に、千葉町に新たに設けられた軍事施設です。
その名の通り、鉄道軌道の材料や蓄積の管理、列車の組立や修理等を行うことを目的とした軍事施設だったという。
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この企画展の開催中、キャンパス内に残る鉄道連隊材料廠の遺構「旧鉄道連隊材料廠煉瓦建築」の内部が一般公開されていました。
旧鉄道連隊材料廠煉瓦建築は、鉄道連隊材料廠が千葉町に新設された時に、その施設の一部として建設された煉瓦棟です。
施工は県内の軍事関係の施設を多く手掛けた戸田組(現・戸田建設株式会社)が行ったとされ、1908(明治41)年8月の建築であるという。
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煉瓦棟の両翼には木造トタン張りの建物が張り付いており、この木造部分の入り口扉を通って、煉瓦棟内部に入ります。
この扉には電動ロックがかかっているとのことで、案内の大学の職員さんとここまでキャンパス内を歩いてきて、ロックを解除してもらう必要があります。
煉瓦棟は老朽化や東日本大震災の影響で痛みが激しく、上から煉瓦が落ちてくる危険があるため基本は立ち入り禁止、このように例外的に入れる時でもヘルメットを着用します。
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煉瓦棟は東西54.4m、南北12.7mと、東西に長い長方形をしており、作業のための広大な空間がとられています。
棟内で特に目立つのは煉瓦造の連続した10連の孤形アーチですね。
連続するアーチは、大きな建物の中に橋が造られているような印象を与えました。
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特徴的な、柱と柱の間隔が約5.4mという長さの狐形アーチ。
この長大な間隔は、アーチの下に車両を通り抜けさせるためのものだという。
鉄道連隊材料廠の施設として運用されていた当時は、アーチの向こうに見える外壁に取り付けられたシャッターの向こうから、車両が修理等のために入ってきたそうです。
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こちらはシャッターの向こう、煉瓦棟の南側に面する外の写真です。
雑草の生えた地面には、シャッターと交差するように敷設されたレールが今も残っています。
手前に見えるレールは軌間が広く、これは狭軌(1072mm)であることから国鉄のレールであるされています。
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国鉄のレールの一つ西隣にも、4本のレールが敷設されており、こちらは軌間600mmの軍用軽便鉄道のものであるそうです。
しかし、なぜ4本もレールがあるんですかね。
狭軌の車両と軽便鉄道、どちらも乗り入れられるようにしていたのでしょうか。
この辺はよく分かりません。
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再び煉瓦棟内部。
煉瓦棟の煉瓦の積み方は、長手面の段と小口面の段が交互に並び、角に4分の3の大きさの煉瓦を組み込むという「オランダ積み」です。
煉瓦棟は10連の煉瓦アーチやオランダ積みなど造りが珍しく、建築史上でも貴重な建造物ということで千葉県の有形文化財(建造物)に指定されています。
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しかし千葉県指定有形文化財でありながら、煉瓦棟は老朽化で、また東日本大震災のような大きな地震があれば崩壊する危険性があることから、震災後ずっと内部公開はされていなかったという。
煉瓦棟を再活用するためには修繕工事をする必要があるところ、これだけ大きな建物のこと、修繕には4〜6億程度の費用がかかるそうです。
大学でそれだけの費用を捻出することはできないこともあり、こうして企画展を行い広報したところ、千葉県知事が来訪するなど反響が大きかったので企画展の期間が延長され、それをSNSで知った私もこうして見学に来ることができた、という次第です。
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美しさではなく老朽化という目線で見てみると、外壁の煉瓦積みの一部が欠損している、外壁に亀裂が走っているなど、確かに見ていて不安になってくるところです。
固定金具によって強化されているものの、その固定金具自体が経年劣化等によって折れ曲がってしまっているなど、大きな地震があったときにはうっかり崩れてしまいそうな感じでした。
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煉瓦壁には埋め込み梯子が取り付けられていたものの、一部は取れてしまっていて上には上がれないようになっていました。
この埋め込み梯子を登っていくと、狐形アーチの上に出ることができたようです。
よく見ると、更にその上に屋根の上に出るための梯子も見えますね。
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一部では煉瓦積みが崩れ始めているなど、バランスが危うくなっている感のある旧鉄道連隊材料廠煉瓦建築。
修繕のハードルは高く、そうなる前に壊れてしまっても不思議ではありません。
企画展の時期以外でも外から見ることは可能なようですので、その姿をひと目見たいという方はお早めに。
(訪問月2024年9月)